時々、言われることがあります。
「あなたの絵は少し毒があって怖いので、もっと明るく、可愛らしい絵は描かないのか。」
そういえば昔も言われたことがあります。
「せっかくなら、もっと温かい絵を描いたのが見たい。」
これは普段感じるのですが、
素直に可愛い絵、素直に明るい絵、素直にポジティブな絵、好きな人多いです。
敢えて「素直に」という形容詞を付けて、拗ねたみたいになっていますがごめんなさい。
単純に、ストレートで分かりやすい、受け入れやすい部分がある、
ということが言いたいのです。
私は目下、画家志向で活動していますから、画家の観点で言うのですが、
画家それぞれには、個性といいますか、作風やコンセプトがあり、
自分の表現したい世界を、その世界観に見合うモチーフや色彩や造形で、作品にしています。
そして、絵を購入してくださるお客様や、ご注文を下さるお客様は、
自分の作風を理解した上で、そうしてくださるのだと素直に考えている部分があります。
少なくとも、私はそうです。
一方、絵を観にいらっしゃるお客様にも、それぞれの嗜好がありますので、
やはり、ご自分の好きな傾向の絵を観たい、欲しい、と思われるのは自然なことです。
ですから、単純な「見た目」の判断だったとしても、
この画家の絵は好き、あの画家の絵は嫌い、
と感じることも、自然なことなのではないかと思います。
表現というのは、最終的に「伝わってなんぼ」という部分がありますので、
表現した世界観がどれだけ伝わりやすいかという課題があるかもしれません。
ただ、人間同士の、普段の言葉コミュニケーションにおいても、
結局、言葉を尽くしても気持ちが伝わらなくて残念な思いをする、
ということは往々にしてあるように、
画家の表現がずっしりと伝わる相手と、どうにも伝わらない相手が存在しても、
不思議なことではないと思います。
今までの経験(自分の絵に対する評価を受けた場など)を振り返ってみると、
古くからの知り合いや、
たまたま私の絵が好みではないのに会場に紛れ込んでしまったお客様から
「もっと明るく、可愛らしい絵は描かないのか」と言われることが多い。
古くからの知り合いの場合は、私の昔を知っているので、
大きな変化があったりすると心配することもあるでしょう。
例えば、10代になって突然「紫色」が大好きになり、
文房具から服装まで紫づくしに変えていく私を、親がよく心配していました。
私の今の作風が定着し始めたのは、ここ数年なのですが、
それ以降に私の絵を観て下さるようになったお客様は、
特にそういったことはおっしゃらない。
「画家とお客様」という出会いの当初から、
そういう作風の絵描きで、そういう作風が好きな人で、
というマッチングができているからですよね。
ただ、たまたま好みではない画家の展覧会に紛れ込んでしまったお客様が、
単純に、ご縁がなかったのね、という形になってしまうのは残念だなと思うこともあります。
できれば、見た目の好みに引きずられずに、
これも何かのご縁と思って、画家さんと色々お話してみてほしい。
お話した内容が、理解(受容)できるかどうかは別の問題ですが、
どんな表現も、それを受け入れ、欲している人たちがどこかにいる、
ということは事実なのです。
もしかしたら新しい世界が広がるかもしれないので、
可能性のひとつとして、好みでないものも楽しんでみようかな、
と思っていただけたら嬉しいなと思うのです。
posted by はやしすみこ at 12:12| 東京 ☀|
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