それにしても長いタイトルなのです。
会田誠展「はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かしさについて思いめぐらそうではないか。」
ことの発端は、Facebookで流れてきたレコメンドでした。
寺田倉庫の運営する日本の伝統画材のラボ、Pigment Tokyo(https://pigment.tokyo)にて7月に開催された、会田誠氏のセミナー開催のリンクが貼られていました。
現代美術家にとって画材とは何か、というテーマのセミナーで、2時間という気軽な長さだったこともあり、リンクを踏んで申し込みをし、行ってきたのですが、そのセミナーで個展が開催中だと知ったのでした。


なんというか、現代美術というのは私にとって、まだ難解な部分があります。
難解というより、これは思考回路の問題だと思うので、そもそも私の思考回路自体が現代美術的ではないのだと思います。
しかし、セミナーを拝聴してにわかに興味が湧いてきました。
「絵の具をあんなに盛り上げて描く必要はないのではないか。見えるのは表面色だけなのだから、ボリュームと表面色は別々でいいのではないか。」という一節に、
えっ、と、言われて、みれば、そ、そうだよね。
しかも、それは「MOTTAINAI精神」。
これは、実際に見てみないことには始まらない気がする。
それで、今日やっとタイミングが合ったのでした。
ミヅマアートさんは、飯田橋と市ヶ谷のちょうど中間あたりにあります。お堀に沿ってひたすらどちらかの駅を目指せば迷子にはなりません。
わりととっつきにくい印象の扉ですが。。。
扉に小さな覗き窓があるので、安心して入れます。


さて、お弁当のプラスチック容器を支持体に、発泡ウレタン(ボリューム)とターナーのアクリルガッシュ(表面色)で制作された作品は、「ランチボックス・ペインティング」シリーズという名前で、その発端は2001年の横浜トリエンナーレの時まで遡るとのこと。
展覧会場は、がらんとしたスペースに、キャプションもなく、ひたすら弁当箱作品が並んでいて、「本当にお弁当箱ばっかりだ」という感じです。
しかし、入り口から奥に向かって壁づたいに鑑賞するにつれ、ふっと沸いた疑問がありました。
「発泡ウレタンの形と色の組み合わせは、どうやって決めたのだろうか。」
激しいコントラストの配色のものもあれば、非常に優しい和風の配色もある。
お餅のようなボリュームもあれば、米粒のようなボリュームもある。
これらは、無秩序なのか、秩序があるのか。
それで、会場の床の真ん中に立って引きで眺めてみたのですが、そこで初めて気づいた(というか私がそう感じた)のは、それぞれが独立して、造形的な意図のある絵画だということでした。
お弁当の容器は、無地のものも柄つきのものも様々使ってあるのですが、それらは全て下地処理ずみのキャンバスに相当していて、発泡ウレタンのボリュームや形、アクリルガッシュの配色も、何となくそうなったのではなく、1枚ずつ丁寧に造形された絵画なのだと感じました。
空のお弁当容器を見て、そこに絵画との共通点を感じて作品が実現するなんて。
だから、「私の中の認識では」会田氏の根底にあるのはやはり絵画で、ざっくりと画家というタグ付けでいいのではないかな、と思いながら、ギャラリーを後にしたのでした。
ギャラリーの受付カウンターに、会田氏による今回の作品の説明が置かれているので、鑑賞された際はそれもぜひ一読していただくと良いと思います。
もっと私自身のアンテナを敏感にできないものかしら。
まだまだ分からないことも知らないこともたくさんあるのです。