2014年06月21日

【オリジナルと複製、アナログとデジタル、さまざまな価値観?】

SNSの投稿に作品の画像をアップした知人がいて、その画像に写っていた絵があまりに可愛らしかったので、「画像じゃなくて本物が見たい」という趣旨のコメントをしたところで、ふっと思い出したことがあります。

最初に書いておきたいのですが、私は、ここから先に書くことについて、是非を問いたいわけではないのです。ただ、こういう価値観が生まれた背景や、こういう価値観に直面した際にどうしたらよいのだろうか、ということに興味がある、というだけなのです。

さて、話を元に戻しまして、「画像じゃなくて本物が見たい」とコメントしたときに、ふっと思い出したのは、少し前にどなたかが「最近の美術を学ぶ若い人たちは、展覧会のDMや作家のHPを見ただけで満足してしまい、ギャラリーになかなか足を運ばない。良い作家だからと紹介しても張り合いがない。」というような話をされていた場に居合わせたことでした。

これは、インターネットの普及によって「誰もが気軽に情報発信できる」という環境が促進されるようになってから、様々な形で取りあげられている問題ではないかなと思います。

「HPがないとお話になりません」「HPで見るからいいです」「HPで見たのでわかります」というような言葉を何度も聞きました。
その直接的な結果なのかは断言できませんが、展覧会の会期前や会期中に、参加作家の出品作をHPやSNSで積極的に紹介するギャラリーさんに対して、作家さんの反応が、「宣伝になるから大歓迎」という肯定派と「ネットで満足してしまうからやめてほしい」という否定派、ざっくり言えばその2パターンに分かれるようになっているのも現実です。

私自身はと言えば、自分でHPも作っていますし、SNSでも積極的に絵の画像を掲載していますし、ギャラリーさんが宣伝してくださるのも歓迎派です。
ただそれは、都内中心にしか活動できていない自分にとって、ネットはそれ以上の広範囲の人々に、私の存在を知ってもらえるきっかけになるかもしれない、という期待をしているからです。基本的には画家を名乗っているので、実物を見て気に入っていただけることが最大の幸せだと思っています。

だからこそ「HPで見たからいいです」「HPで見たのでわかります」「だからわざわざ展示見なくても」と言われてしまうとやはり凹むのですが、同時に「彼らは、どうしてHPだけで満足するのだろう?」という疑問もわいてきます。
これは、CGという作品形態がアートの分野で地位を確立してきたことが影響を与えているかもしれないなと思いました。

もう一度書いておきますが、私は「アートはアナログvsデジタルどちらが上か?」という議論をしたいわけではないです。

いわゆる「原画」と呼ばれる作品形態は、キャンバスや紙などに画材を使用して描かれ、額装の上、物理的に展示されるものです。そして、それらの複製品である「デジタル画像」がネット上にアップされます。つまり、アナログがオリジナルで、デジタルが複製です。
一方、CG作品はオリジナルがデジタルの形態であり、物理的な展示の必要がある場合において、プリンタ出力の上額装され、展示されます。つまり、デジタルがオリジナルで、アナログが複製です。

さて、両者はまったく別方向のアプローチで存在するにもかかわらず、ネットを生活の中心に据えている人々にしてみれば、それが「デジタルによる複製」であれ、「デジタルによるオリジナル」であれ、ネット上で見る限り、視覚的にはネット上にある「同等なコンテンツ」と認知されているのではないでしょうか。どちらもネット上にあるコンテンツだから、オリジナルがどういう形態や存在のものなのかはあまり重要なことではなく、今、ネットで見て楽しめるか楽しめないか、ということが重要になのかもしれない。だから、「HPで見たからいいです(=もう興味は満たされました)」と感じるのではないのだろうか、と・・・。

もちろん、これは私の想像であり主観にすぎませんが、原画には原画の魅力があるにも関わらず、ネット上の画像で見た、という視覚的な満足でクローズするのには、見る側のそういった意識があるのではないかと思わずにはいられません。

何度も言いますが、私は「アートはアナログvsデジタルどちらが上か?」という議論をしたいわけではないです。
アナログにはアナログの魅力が、デジタルにはデジタルの魅力があるので、アナログはアナログの状態で、デジタルはデジタルの状態で鑑賞するのが最大限その魅力に触れることができる手段なのではないのだろうか、だったらなぜ、アナログ作品そのものの魅力が最も大きい状態で見てみよう、という行動(=展覧会に行こう)につながらないのだろう・・・という疑問を常に抱いている、ということが言いたいのです。

私はもともとWebの仕事をしていた人なので、ネットの情報共有の可能性について、あまり否定的ではないつもりです。ですからこれからも、ネット上で自分の描いた絵を紹介しつづけると思います。
しかし、ネットで見てくれた人々がそこで満足してクローズにならないために、更に自分に何かが必要なのだとしたら、それは何なのかをもう少し真剣に考えることも、これからの自分の課題かもしれない、と考えています。

ちなみに、私が現在、油彩画や鉛筆画を作品形態にしているのは、アナログが上だと考えているからではありません。
それが、自分にとって一番しっくりくる表現手段として落ち着いたからです。
posted by はやしすみこ at 19:54| 東京 ☀| Comment(0) | もの想い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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