2014年05月31日

【映画「ヴィオレッタ」観に行きました】

実はあまり劇場に映画を観に行かない私。
「あ、面白そう」と気になっても、なんとなくモジモジしているうちに上映期間が終わってしまい、後日、縁があればレンタルで観る・・・というタイプ。

でも、先日、久しぶりに一人で映画館に行きました。
私のSNSのタイムラインで「ヴィオレッタを観に行った」という投稿がちらほらとし始め、彼らの感想を読み、レビューなどを読むうちに、少し興味を引いたからでした。

私が描いている絵のテーマにはエロスというものはほとんど関係ないのですが、やはり絵の活動をしていると、このジャンルの作家さんと知り合ったり、展覧会を訪れる機会はそれなりにあります。
その時に、ほぼ間違いなく遭遇するのが「これはエロかアートか?」という議論です。その議論の発端は、ほぼ間違いなく「エロ=不道徳」という価値観の存在ではないかと思います。

映画「ヴィオレッタ」もその議論に巻き込まれている作品のひとつで、しかし作り手の真意は別の次元にある。
「作り手の真意と作品の評価の次元が違ってしまっているのは何故だろう」興味を引いた一番の理由はこれでした。

この映画を創った映画監督、エヴァ・イオネスコ氏は、ご自身が少女時代に、母親である写真家イリナ・イオネスコ氏のモデルをつとめた。
ざっくり言ってしまうと、その写真にはエヴァ氏の少女時代のヌードが含まれており、
写真集が出版されるにあたり「母親が幼い娘のヌードを撮影して出版するなんて」という強い非難が集まった、ということ。

その、モデルになった娘自身が映画監督となって、当時のことを自伝的映画として発表する。
おそらく、その事実だけで「この映画は不道徳な内容に違いない」と観る前から思われるだろうことは、容易に想像がつきます。

・・・ということは、私もあまり先入観を持ちたくないので、そういう話題性の作品だということだけを知った時点で、それ以外のことを深く調べないでひとまず映画を観ました。

エヴァ氏は、母と娘の関係性を軸に映画を創りました。
もちろん、過去に出版されたヌード写真集の存在は取り消せない事実ですが、この映画には少女のヌードは必要なかったし実際に描かれなかった。
映画は、本当に描きたい、伝えたい、という部分をできるだけ純粋に取り出せるように、丁寧に慎重に作られていたと思います。

母の愛を求める幼い娘と、純粋に芸術に生きようとするために後戻りできない母との間に生まれる、葛藤、すれ違い、束縛、憎しみ、さまざまな感情の混合物。
それでも、切っても切れない、母と娘の間に存在した果てしない関係性。
母から逃げる娘、娘に「愛している」と叫びながら追い続ける母。
その痛々しさが切なくて、最後には少し涙がこぼれました。

家に帰って、この母娘のことをネットで少し調べました。
映画で感じたものよりも、更に業の深い親子関係があるようです。
おそらく、エヴァ氏にとっては、この映画を創ったことで何かを終える、何かを納得することができたかというと、そうではないと思います。

この映画をどのくらいの人数の人が観るかわかりません。
観た人たちが何を感じるかもわかりません。
やはり、母が娘のヌードを撮って出版するなんて・・・という議論に戻ってしまうでしょうか。

この母親は芸術家でした。
この母娘の関係性は、芸術というものを抜きに語ると、余計に違う次元へ議論が飛んでいってしまうように思います。
そういう側面が、余計にこの映画の評価を難しくしているのかもしれません。
私も絵を描いていますから、芸術家の、表現に対する衝動や憧憬や執着というようなものを、少しは実感する機会を持っていると思っています。

そしてやはり、エロかアートか?という議論は、この先も無くなることはないのでしょう。

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余談ですが、映画館って大手の大きな劇場に行くことが多いので、こういう小規模の、しかも地下に上映室がある建物って妙にわくわくしました。
昔から「階段」というシチュエーションに弱いのです、どこまでも続く螺旋階段だったり、地下へ続いて先が暗くてよく見えない階段だったり、そういう風景。

シアターイメージフォーラムの、地下2階上映室への下り階段です。
あまりに雰囲気が良かったので、思わず撮ってしまいました。

20140531-01.jpg
posted by はやしすみこ at 20:31| 東京 ☀| Comment(0) | 音楽・演劇・映画・本・グルメ・その他雑食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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